あるアーティストの楽曲提供コンペの話を頂いた。
作家事務所ではない当社に、本来は来る話ではない。
仲間が廻してくれた仕事だ。

クオリティーも時間的にも難易度は高かった。
2人にやってみるか?と話した。
3日後、2人から曲が送られてきた。
とても良かった。
少し驚き、そして嬉しかった。

近ごろのリードナンバーは特にサウンド志向が強い。
派手なアレンジ、派手な音が好まれる。
だから、いわゆるボカロ系の打ち込みのテクニックがなければ、最近のコンペでは苦戦する。
ボカロ系打ち込みの弱点は、どれもこれも似通ってしまう事だ。
コンペの会議では『AよりBの方がハデだね』『BよりCの方がダイナミックだね』と、たいがいは各曲を比較しながらふるい落とす。
個性が立っていないから、消去法になるのだ。

話をくれたのは、そのアーティストのマネージャーだった。
従って、普通は中間に介在する音楽出版やレーベルのディレクターをすっ飛ばして、我々の曲はアーティスト本人の手元に届く。
提出した2曲は、圧倒的な個性を放っていた。
少なくともボカロ系打ち込みサウンドよりもオリジナリティが高かった。
記憶に残ったはずだ。
残念だがコンペでは選ばれなかったが、そのアーティストがアルバムを創る時、もし今回提出した方向の音楽を求めたなら、思い出してくれるだろう。
シンガー・ソングライターの楽曲は、ハマったら強い。

シンガー・ソングライターは、自分で歌うことを前提に曲を創る。
だから、身体の中から湧き出るような歌になる。
大きな魅力だ。
しかし半面、着想からアウトプットまであまりにもシームレスに流れてしまい、葉っぱばかり気になって森を見ない場合がある。
第三者に楽曲を提供する曲、他の誰かが歌う言葉を選びメロディーをつける創曲は、普段は使わない神経を使う。
自分の作業や作品を、客観的に考える良い機会になるのだ。
上手くいくと、創作能力は飛躍的に高まる。
楽曲提供の機会があれば、大事にしたいと思う。


■黒木ちひろ
Music Video/鳩と鶴

■トクヒサレナ
Live Video/Last Love



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